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“既視感”、という言葉がある。
実際には経験したことがないのに、まるで経験したことのあるように思うことだ。
実際、僕はあの子に会ったとき、まるで過去に同じことがあったような錯覚を覚えた。
そして、何故か彼女を自分の家に連れて帰っていた。
『…ん……』
触れた彼女の身体は、とても軽かった。
背負ったとき、彼女の髪が僕の頬に触れた。
どういうわけか、それにも“既視感”を覚えた。
というより、彼女に会うこと。
彼女自身が、僕の“既視感”なんだろう。
実際、今まで僕は、そんなものを経験したことがなかったから。
だから、何故か。
雨に濡れていた、彼女。
誰も見向きもしなかった彼女を、
放っておくことができなかった。
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