10人が本棚に入れています
本棚に追加
危なかった……。
気配は確かに消していたのに、破られた。
けれど、開けずに行ってくれたのは助かった。
どうしてか、彼が近くにいると感情が不安定になる。
髪に触れられたからだろうか。
髪に触れられるのは、苦手だ。
けれど、
あの人になら、髪を触れられてもいいと思ってしまう“わたし”がいる。
“私”が出会ったあの人は、“わたし”が会った“あの人”とは別人なのに。
どうしてか、“あの人”を意識してしまう。
ああ、嫌だ。
どうしてこんな、“幸せ”なことが起きるのだろう。
諦めてしまっていたのに。
諦めなければいけないのに。
私が“幸せ”を求めることは、すでに破綻してしまっているのだから。
ああ、やっぱり…………
生きることは、“苦しみ”だ。
最初のコメントを投稿しよう!