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誰も立ち入らなくなった、捨てられた古い建物の中。
かつて多くの人を迎えたであろう入口は廃れ、割れた窓から枯れ葉と木枯らしが吹き荒ぶ。
昇降機は飾りと化して、上下をつなぐのは階段のみ。
その階段も手すりは折れて、ところどころに瓦礫が散らばる。
何より異彩を放つのは“血痕”。
この建物は、“死”を連想するものが在る。
霊感がある人間ならば、入った途端に不調を訴えるだろう。ない人間でさえ、恐怖を覚える。
ここには、“人間”の悪意が、恐怖が、歪みのように存在した。
その建物の中で、安らかに寝息を立てる少女が一人。
黒い着物を着て、猫のように身を丸くし、“血”に囲まれて眠る少女。
彼女の名は、綾峰小雪。
「…ん…」
“マガヤク”という、“呪い”の儀式の生贄であり、“呪い”そのものである。
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