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「……ッ」
――殺したい。
結界の中に入って、まず沸いた思いは、殺意。
もう何度も感じた、“マガヤク”同士の共鳴的な現象だ。
それは、同じ相手を殺す。
“儀式”を停滞させないための措置。
そして、殺し合いを加速させるための呪い。
――殺したい。
それを、意志を持って消す。
これが出来なければ、私は戦いにすらならずに死ぬだけだ。
……妖術・穏形。
気配を、消す。
周囲の環境、周囲の風景に同化する術。
それでも。
「みーつけた」
すぐに、見つけられる。
そこに、一匹の蝶。
それが、人間に変わる。
「“破”ッ!」
そして、彼女の持つ紙の刃が迫る。
キインッ!
その間で、甲高い音が生じる。
私の寸鉄と、彼女の刃がぶつかった音。
「ハアッ!」
その間に、持っていた寸鉄の一本を、投げる。
それは、人間には当たらず、現れた蝶に当たった。
「はっ、無駄だっ、て!?」
そして、彼女が網に掛かる。
暗殺術“蚕”、拘束術“繭”。
探知するための糸を張り巡らせる術“巣”から変える。
けれど、それでも。
彼女は蝶となって逃れる。
「…ちっ」
軽く、舌を打つ。
“猫”には、そのような能力がない。
そして、武の天才なんてものでもない。
それでも私が戦えるのは、大体の“マガヤク”の能力を知っているからだ。
(警戒していないうちに、仕留めたかったのに)
これで、“蝶”は次から配置してある“糸”を警戒して戦うだろう。
(けれど、それなら)
逃げ場を無くせば、いいだけだ。
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