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雨の降りしきる中、僕はその子に出会った。
彼女は雨で濡れるにもかかわらず、傘をささず、合羽のようなものも着ていなかった。
その身体は見てわかるほどに凍えているようで、震えていた。
けれども、その子を助けようとする人は一人もいなかった。
関わりたくないと、見て見ぬ振りをして通り過ぎるだけ。
彼女に気づいても、ただ見ないふり、いないふり。
暗黙のうちにそんな流れになっていた。
それを見て、彼女はただうずくまっていた。
そんな光景が、どうしても放っておけなかった。
彼女が取り残されたように、本当に寂しそうだったから。
だから、彼女に近づいた。
「君、大丈夫?」
そんな言葉が、自然に出た。
彼女の髪は雨に打たれて、露に濡れているようで、
不謹慎だけど、とても、
とても、
綺麗だった。
そして彼女は、僕の声を聞いた途端、何故か驚いた顔をした。
そして、疲れ果てたのか、まるで眠るように気絶してしまった。
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