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泣く女
食品関連の企業に、勤めていたころの話だ。
取引先の高齢の会長が老衰で亡くなり、しばらくして社葬の案内が自社に届いた。参列を予定していた上司が、前夜に盲腸で緊急入院してしまうという予想外の事態が起き、急きょ平社員の私が出向くことになった。
会社で喪服に着替え、指定の葬儀所に向かう。大手食品会社の社葬だけあって、式場の周囲には大量の花輪が並び、焼香の順番を待つ弔問客の列は建物の外にまで伸び、社会人になりたての私には初めて見るような光景で、しばし圧倒された。
記帳を済ませ喪服の人々に続いてようやく入った会場は、千人は収容可能かと思える程の広さで、改めてその規模の大きさに驚かされた。式場の正面には、会長の好きな色だったのだろうか、青と白を基調にした生花で飾られた立派な祭壇があり、その中央には、これまた立派な額に納められた会長の巨大な遺影が掲げられている。年齢の割には豊かな頭髪、太いまゆ毛にまん丸の目、そしてきりりと結ばれた口元は「かつらを被った西郷どん」のような印象を受けた。
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