17.コンチェルト

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「呼びたければどうぞ」 「うふふ、嘘ですよ。 井崎さんに悪いですもん」 さすが恋愛脳と呼ぶべきか。 石原さんの頭の中では、 尊敬している上司と長年親密な女性を どうにかしてくっつけようと。 そんな青写真を描いているに違いない。 それが如何にもバレバレなのが可愛くて、 つい笑ってしまう。 …でもね、 現実はそんなに簡単じゃないんだよ。 あっちがダメなら次はこっちだなんて、 そんな風に気軽に相手を替えられない。 それは光正を捨てて芳を選んだ私の 禊のようなものだと思うし、 何と言っても私には唯がいる。 迷い抜いて私が出した結果。 …それは光正との別離だ。 光正の幸せを願うのなら、 ここで私は離れるべきで。 私という足枷さえ無くなれば、 光正は新しい誰かと幸せな生活を送れる。 たぶん、それが正解なのだ。 「おはよう、さあ、皆んな行くぞ」 「おはよう!ミツくん!!」 いつも通りに光正がウチに寄ってくれて、 全員一緒に出掛ける。 玄関ドアを施錠してから振り返ると 石原さんと光正が内緒話をしていて、 それを唯が怒っていた。
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