17.コンチェルト

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「…だからなんでこのご時世に 手書きなのかってことですよ。 一部訂正とか出来ないし、 漢字とかいちいち調べるのが すげえすげえ面倒でッ」 翌週の土曜日。 突然、我が家にやって来た森嶋くんは クシャクシャに丸めた原稿用紙を 丁寧に伸ばしている。 それを見て唯が笑った。 「『がんばりましょう』になったんだね。 ウチのクラスでそれになる人って、 すっごくダメな子なんだよ~」 「うう…。唯ちゃんまでそんなことを…。 俺的には『よく出来ました』のつもりで 提出してんのに、平さんが厳し過ぎんの」 平さんいわく、学生時代にバイトで 塾の講師をしていたそうで。 当時のことを懐かしみつつ、 デキの悪い生徒の為に心を鬼にして 書き直しを命じているらしい。 それをそのまま森嶋くんに伝えると、 白けた感じで目を細めながら言うのだ。 「だからって人が心を込めて書いた物を、 こんな風にクシャクシャにするのって…。 なんか違う意味で鬼ですよね?!」 その原稿用紙をひょいと掴み、 ササッと内容を確認してみる。 「森嶋くん、コレどこから文章拾った?」 「え?ああ、ネットで適当に検索して、 それっぽく繋いでみたんですけど。 やだな、そんなバレバレですか?」 >愛とは許すことである。 そんな言葉から始まったそのレポートは、 ひたすらキラキラした言葉が続く。
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