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「…だからなんでこのご時世に
手書きなのかってことですよ。
一部訂正とか出来ないし、
漢字とかいちいち調べるのが
すげえすげえ面倒でッ」
翌週の土曜日。
突然、我が家にやって来た森嶋くんは
クシャクシャに丸めた原稿用紙を
丁寧に伸ばしている。
それを見て唯が笑った。
「『がんばりましょう』になったんだね。
ウチのクラスでそれになる人って、
すっごくダメな子なんだよ~」
「うう…。唯ちゃんまでそんなことを…。
俺的には『よく出来ました』のつもりで
提出してんのに、平さんが厳し過ぎんの」
平さんいわく、学生時代にバイトで
塾の講師をしていたそうで。
当時のことを懐かしみつつ、
デキの悪い生徒の為に心を鬼にして
書き直しを命じているらしい。
それをそのまま森嶋くんに伝えると、
白けた感じで目を細めながら言うのだ。
「だからって人が心を込めて書いた物を、
こんな風にクシャクシャにするのって…。
なんか違う意味で鬼ですよね?!」
その原稿用紙をひょいと掴み、
ササッと内容を確認してみる。
「森嶋くん、コレどこから文章拾った?」
「え?ああ、ネットで適当に検索して、
それっぽく繋いでみたんですけど。
やだな、そんなバレバレですか?」
>愛とは許すことである。
そんな言葉から始まったそのレポートは、
ひたすらキラキラした言葉が続く。
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