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思わず突っ込みを入れずにはいられない。
「いやいや、森嶋くんは許す側じゃなく、
許して貰う側だよね??」
「あはは、言われてみればそうですね」
>右の頬を打たれたら、
>左の頬を差し出せ。
「ちょ、ところどころ聖書も混ざってる」
「え?それって聖書なんですか?
雅さんって博識ですね」
じょ、常識だしッ。
まったくもう、この新人類め!!
読めば読むほど自分の言葉が1つも無い。
これじゃあ平さんも呆れるわ。
そう感想を述べたところで、
洗濯を終えた石原さんがやって来た。
「やだ、森嶋さん、また来たんですか」
「な、何だよ今更ッ。
いつも来てるのに突然そんなイヤそうに」
「だって森嶋さんはオンナの敵だって。
我が営業部の中では、要注意レベル
MAXに格上げされちゃいましたよ」
「女ってすぐにそうして徒党を組むよな。
なんかそういうのって低俗…」
この言い争いを止めようと、
私は思わず手にしていた原稿用紙を
石原さんに渡してしまう。
「…なんですか井崎さん、これ」
「例の事件に関する制裁で
森嶋くん、反省文を書かされてるのよ。
しかもテーマが『愛について』ですって」
至極マジメな表情でそれを受け取り、
黒目を動かしながら読んでいた彼女は
次第に眉をひそめる。
「酷い…。なんですかこりゃ。
こんな男に愛を語る資格は有りません。
森嶋さんはすぐ傍に井崎さんという
愛のレジェンドがいるのに、
どうして感化されないんですか?」
「やだ石原さん、私を巻き込まないで!」
まるで女子みたいにキャッキャすると、
真顔で森嶋くんは訊いてくるのだ。
「えっと、じゃあ教えてください。
雅さんと旦那さんの馴れ初めを」
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