17.コンチェルト

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そんなもん、言えるワケないし。 だって自分の恋愛話なんて、 裸になるより恥ずかしいよね?? 焦りながら私がそう答えると、 石原さんが真顔で反論してきた。 「私は全然恥ずかしくありません。 だってその経験を積み重ねて 出来上がったのが現在の私なんですよ」 「えっ、まあ、そうなんだろうけど…」 「信じて、裏切られ。 裏切られてもまた信じて。 そんな自分を褒めてあげたい! ていうか褒められたいんですっ!」 「えっ…?ええ…ああ…」 どうやら何かのスイッチを押したらしく、 石原さんは激熱モードに突入したようだ。 「いいじゃないですか。 だってどんな結末であれ、 『恋』とはそれ自体が美しいのです。 そしてその美しい物語は、 一生のうちにそう何度も綴れません。 だから自分以外の物語を知りたくて、 映画を観たり小説を読んだり。 それでも飽き足らずに、 こうして身近な人から話を訊くのです。  恋は魔物!  恋こそすべて!  恋って最高! そうやって自分で自分を鼓舞しないと、 恋することに臆病になってしまうから。 いつその機会が訪れても、 怯えないよう慣れておきたいんです」
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