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石原さんはネゴシエーターの才能
を備えているのではないだろうか。
さすが、あの口の重い光正から
恋愛話を訊き出しただけのことはある。
なんと表現すればいいだろう?
『単なる興味本位』でも、
『興味の有るフリ』でも無くて。
心の底から知りたがっているのが
こちらにも伝わってくるのだ。
>アナタの恋愛を知りたいんですよ!
>それを私の糧にさせてください!!
…うん、そういう感じだ。
私なんかだと恋愛を斜に構えていて、
それ関連の話をすることに罪悪感を抱き、
常に傍観者の立場でいようとするのに、
石原さんは堂々と真ん中にいようとする。
恋愛をバカにしていないし、
むしろ恋愛を崇拝し、
焦がれているのだ。
この違いは大きい。
なんだかもう、
『話してもいいかな』と思い始めていた。
あの頃は無我夢中で分からなかったけど、
多分3人共キラキラと輝いていたはずだ。
みっともなくて、哀しくて、
不安に押しつぶされそうで、
そして途方もなく美しかった私達の恋。
仲間に入れずスネる唯には、
お気に入りのアニメ映画を見せておいて。
陽気なオープニング曲をバックに私は、
静かにゆっくりと語り出す。
…私と芳と、光正の物語を。
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