17.コンチェルト

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「ずるーい、2人だけでコソコソ話! 唯にも教えてよッ」 「はいはい、じゃあ梨乃オネエちゃんと 仲良く歩こうか!おいで、唯ちゃん」 光正と一緒に出勤したいと騒いでいた …はずの石原さんは何故か唯と2人で サカサカと歩き出す。 この先に集団登校の合流地点があるので、 そこまで連れて行ってくれるようだ。 キョトンとする私に、 光正が話し掛けて来た。 「ごめん…雅。 さっき石原さんから聞いた」 「うん?え?何を…」 「北陸支店へ異動する話」 「あ…そ、そう。 やだな、なんで教えてくれなかったの? 初耳だったから凄く驚いちゃ…」 私が最後まで言い切らないうちに、 光正はこう言うのだ。 「それ、無くなったから」 「えっ?!本当に??」 「どうせいずれ耳に入るだろうし、 先に伝えておくよ。 …異動の話、俺の方から断ったんだ」 「は?なっ、なんで??」 栄転なのに。 自分の人生を変えられるチャンスなのに。 そんなことを考える私に、 淡々と光正は続けた。 「だって俺、 雅に会いたくて転職した男だぞ? なのに転勤しちゃったら、本末転倒だろ」 「嘘、まさかそんな理由で??」 「『そんな』なんて言うなよ。 俺の中では重要なことなんだ。 だって、雅のいない人生なんて 耐えられないからさ」
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