17.コンチェルト

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『結婚前提で付き合いましょう』 と言って一旦は断られているのに、 いったい何なの、この態度?? ドライ過ぎて引くわ。 むしろ私の方が気を遣うっつうの! 「珍しいね、朝からパンとか食べるの。 いつも朝食はコメ派じゃなかったっけ?」 「あー、えっと…。女から貰ったんです」 「女??」 「だって雅さん、相手してくれないから。 あれから適当なの見繕って呼び出したら、 ソイツが朝早く起きて買って来ちゃって」 やっぱり理解不能! この男の頭の中はどうなってるの?? 「うわ…」 「あ、やっぱ引いてます? だって雅さんが訊いてくるから…」 「うわ…うわ…」 「そういう反応されると傷つくなあ」 あまりにも軽いその生き方を、 全て否定するワケでは無い。 多分この人は自分に正直なだけなのだ。 「ねえ、人との付き合いは 苦手なんじゃなかったっけ?」 「うーん、別に喋らなくても そういうのは出来ますし…」 訊かなきゃ良かったと激しく後悔し、 ふと背後に気配を感じて振り返ると そこに営業部の新人女性が立っていた。 見るからに明るくて可愛いその人は、 笑顔から一転、怒りの形相へと変化する。 「この…クソ男ッ、ふざけんな!!」 止める隙も無いほどの素早さで、 彼女は手にしていたバケツの水を 勢いよく森嶋くんにかけた。
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