17.コンチェルト

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「…ふうん、そっかあ。 森嶋の女グセが悪かったせいで、 俺のデスクがこんな風になったワケだ」 「はい、あの…平さん、すみません」 平さんは私より1つ年上の既婚男性だ。 席替えで隣りになり真っ先に思ったのは、 粗相しないようにということで。 そのくらいこの人は隙の無い感じなのだ。 バケツの水をぶちまけた新人女性は、 早々に営業部の部長へと引き渡され。 対する森嶋くんの方も ウチの室長から事情聴取を受け、 コッテリと説教をくらった後でこうして 平さんに謝罪に来たのである。 幸いなことにノートパソコンは、 蓋を閉じてあったお陰か無事で。 念の為に代替機に中身を移した上で、 点検に出すことになったそうだ。 その手に鞭を持っていたならば、 確実に森嶋くんを何度も打っただろう。 そのくらい、平さんは怒っていた。 しかも痴情の縺れが原因だと知り、 更にそれは勢いを増しているようだ。 「パソコンが無事だとは言え、 この辺りに並べてあった貴重な参考資料、 それにリサーチ結果なんかが全滅だよ。 いったいどうしてくれるのかな?」 「えと、そ、それは…。 俺に出来ることがあれば言ってください、 本当に何でもしますので!」
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