1113人が本棚に入れています
本棚に追加
「家に帰りゃよかったじゃん。大学から近いだろ?」
「まぁねー。でも家帰ったってヒマだしさ。だからさっきまで、ここでボンヤリしてた」
今座ってるベンチはキャンパス内でも高台の場所にある。
街の方を向いて座ると、遠くまで見通せて気持ちが良い。
だからここは、暇潰しに最適な人気スポットだったりする。
「つうかミノルさん? それがお前の昼飯なのかい?」
「うるせぇなカップ麺中毒。人の食にケチつけんなよ」
「お、おう。別に今始まったことじゃねぇけどさ、味噌一色ってすげぇな」
「これは昨日専門店で買ってきたばかりの、珍しいものヤツだ。これから初めて食うんだ。邪魔すんなよ」
「はいはい。静かにしてますよーっと」
さて、赤味噌さん。
君はどんな味がするのかな?
塩ッ気は、風味は、なめらかさはどうかな?
今それを確かめてやるぜぇーー!
ーーポロリ。
オニギリがまるで逃亡でもするかのように、オレの手から溢れた。
ついつい余計な力が入ってしまったのか。
それはポンッと目線の高さまで跳ねて、無情にも地面へ。
急斜面の下り坂へと落下した。
「アァーーッ! オニギリが逃げて行くぅーー!?」
「おいミノル! 危ねぇよ!」
「待てやコラァーー!」
オレは制止の声を振りきって、全速力で後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!