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かなり離れた位置をオニギリが転げ落ちていく。
まるで自走してるかのように加速しながら。
「くそ! こんな事になるなら三角オニギリにしときゃ良かった!」
悔やんでも時すでに遅し。
完璧な球体の塊はグングン速度を増して転がっていく。
オレは見失わないように追いかけるだけで精一杯だ。
そしてオニギリは段差に乗り上げ、天高く跳ねる。
宙を泳ぐ味噌付き白米。
それを黙って見過ごす訳がない。
「逃がすかぁあーーッ!」
オレも合わせて空を跳んだ。
精一杯に手を希望へと向けて伸ばす。
指先から標的までの距離は1メートル……50センチ……10センチ。
そして……。
「よっしゃあ! 捕まえた!」
無事に標的確保。
右手には確かな感触が宿る。
だが喜んだのも束の間で、脇の方から凄まじい爆音が迫ってきた。
顔を向ける暇すら無い、まさに一瞬だった。
ーードガァアン!
そこでオレの意識は途絶えた。
結論から言うと即死だった。
大型トラックに思いっきり轢(ひ)かれてしまったようだ。
坂道でジャンプしたときに車道へ飛び出していたんだが、全く気付かないとかバカすぎる。
魂とやらが天に昇る瞬間に見下ろした事故現場が、余りにもグロテスクで印象的だった。
しばらくは焼き肉を食えそうにない、食う機会があるかは知らんが。
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