最終話 そして世界は味噌になる

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唖然とした目線の中で、金と袋を手渡した。 男はそのまま振り向きもせずに、いそいそと酒場の方へ流れていった。 「見たか! 食いもんだぞ、美味いんだぞ! そしてタダなのは今日だけだからな!」 「お、オイラもらおうかな?」 「はいまいど!」 「アタシも一袋おくれよ!」 「はいまいど! どうした、次は来ないのか? 言っとくがな、味噌は万病に効くぞ!」 「ええっ!?」 「本当だ、オレは風邪ひとつ引いた事がないからな! さらに肌や髪の艶もグンと良くなるぞ!」 「ええぇっ!?」 「さらにさらに極めつけはなぁ、味噌を食えば彼女が出来るぞぉおーー!」 「買ったぁぁああーー!!」 それからはもう、列も秩序もなかった。 我先にと袋に手を伸ばし、時には奪い合い、各々が味噌愛を示している。 あぁ、素晴らしい。 これこそがオレの目指した世界なのだ! 「お前ら、味噌は好きか!」 「イェーーァ!」 「味噌を毎食食べるか!」 「イェエーーァ!」 「味噌に出会えて魂が幸福を感じているか!?」 「幸福でぇーーすッ!」 感無量、本懐とは正にこの事。 世界は今、味噌に支配されたのだ。 この瞬間だ。 この一瞬の為にオレは生まれてきたのだと思う。     
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