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「どうして、そんなに私のこと……知ってる、の?」
動揺して、声が上擦ってしまう。
「1年ん時、外で寝てたら『こんなところで寝てたら風邪ひきますよ!』って声掛けられて。なんか真面目で堅い子だなーって思った。でもそれから、何もないとこですっ転んだり、ガラスに激突してたり、一人家庭科室に残ってミシン踏んでるのとか見かけて、興味が湧いてきて……気づいたら、みみりんのこと目で探すようになってた」
顔にボッと火がつく。そんなとこ、見られてたなんて。
「2年で同じクラスで隣の席になって、みみりんがだらしない俺の世話焼いてくれるようになって、嬉しかった。でもさー、みみりん全然恋愛感情ないから、どうしたら俺のこと見てくれるかなーって考えて、たこ焼きなら誰にも負けないから、模擬店で推してもらうように横川に頼んだんだよね」
「うえぇっっ!!」
み、見事に騙されてたー!!
「少しは俺のこと、意識してくれた?」
松井くんが一歩近づいて、思わず後退りして背を向けようとしたら、腕をぐいと掴まれた。綺麗なブラウンの瞳がしっかりと見開いて私を見つめてて、吸い込まれそう。
い、意識……めちゃめちゃしてる。松井くんの術中に、嵌ってる……
「俺、本気出したら凄いから。今日はみみりん惚れさせるつもりで頑張るから、覚悟してて」
グイッと松井くんの綺麗な顔が寄せられて、呼吸出来ない。心臓がバクバクして、全身が熱い。体が……震える。
「んじゃ、学祭がんばろっかー」
くるりと背を向けて背伸びした松井くんに、まだバクバクが収まらない。
ーー今年の学祭は、一生忘れられない思い出になりそう。
<完>
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