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いよいよ文化祭当日。10時から16時を2時間ずつで3班に分け、2人でたこ焼きを焼く。松井くんはセッティングをする為に朝イチ担当になっていて、1番下手な私がペアを組むことになった。私たちの他には、まだ誰も来てない。
松井くんはおじいちゃんが貸してくれたという『世界一美味しいたこ焼き(海外にたこ焼きがあるのかという疑問はあるけど)』というのぼりを立て、タコの絵が描かれた暖簾を飾りながら鼻歌を歌い、緊張する私とは対照的に、ご機嫌だった。
「みみりん、今日はたくさん売ろうねー」
「よ、よろしくお願いします」
私のだけ売れなかったら、どうしよう……
そんな不安を抱えていると、頭をポンポンと軽く撫でられた。
「みみりんはこれまで頑張ってきたんだから、大丈夫」
ふわっと笑顔で言われ、胸に熱いものが一気に広がった。
「どうして松井くんは、私のことをみみりんって呼ぶんですか。私、そんなキャラじゃないのに……」
松井くんがクスッと笑った。
「しっかりしてて真面目で責任感強くて一生懸命で世話焼きだけど、ドジっ子で、不器用で、可愛いから」
「なっ!」
「それに、本当は緊張しぃだし、人前に出るの苦手なのに、それ隠すために伊達メガネで気合い入れたり、わざと敬語使って壁作ったりしてるとこも、なんかほっとけない」
う、嘘っっ……ぜ、全部バレてる。
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