一章

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始めは、ただの風邪かと思った。 しかし、風邪にしては連絡が遅すぎる。病院に行っていると考えても、もうそろそろ電話があってもいいはずだ。 今は四時間目が終わり、昼休み。 「帰る前に吉沢の家に寄って帰るか。」 俺はそんなことを考えながら、食べ終わったコンビニ弁当を片付け、次の授業の準備をするのだった。 ────────────────────────────── 「じゃあ、これで授業は終わり。みんな気をつけて帰るように。」 やっと六時間目が終わり、職員室に戻って急いで帰る準備をしていると、学年主任の教師から、 「天満先生、そろそろ成績表に記入をお願いします。」 と言われ、大量の成績表を渡される。俺はどうしようか迷いながら 渡された大量の成績表を見ていると、後ろから話しかけられ、その方向を見ると、須川が立っていた。 「その作業は俺がやっといてやるよ。急いでるんだろ?吉沢の家にでも行くのか?」 「ああ。吉沢の家に行ってくる。無断欠席したからな。しかしいいのか?お前も同じぐらいやることはあるだろ?」 「いいんだよ。昔から要領はいいからな。」 「そうか……。なら頼む。」 俺は須川に仕事を頼むと、荷物を持って学校を後にする。 ────────────────────────────── 「留守か……。どうしようかな。」 吉沢の家に着くと、吉沢の家は留守だった。 このまま待っておいても良いが、いつ帰ってくるかも分からないのに、いつまでも待ち続けるのは無理だろう。 仮に待てるとしても、他人の家の前でずっと待っている人がいれば、通報される可能性も低くない。 そんなことを考えていると、 学校の方向から、黒い服を着た人が複数人こちらに歩いてきているのが分かった。そのうちの一人を俺は知っていた。 その人の名前は、吉沢明美さん。吉沢美玲の母親だ。 吉沢家に父親はいない。ずいぶん前に病気で亡くなった。 だから、明美さんの近くに美玲もいるはず……なのだが、どれだけ探しても美玲は見つからない。 いつの間にか近くまで来ていた明美さんに話し掛けられる。 「あら、天満君。どうしたの?」 「こんばんは。美玲さんが学校を欠席していたので、心配になって、家に寄らせていただきました。」 「わざわざありがとうね。美玲は、あの子は……………………自殺したのよ。」
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