一章

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確かに、美玲からの好意には気が付いていた。しかし、その話と、美玲の自殺はなんの関係があるのか?そう思っていると、大貴がまた話し出した。 「美玲ちゃん以外にも、お前に好意を持っていた奴は何人かいたからな。」 …………は?そんなはずはないだろう。小学校、中学校、高校と全く持てなかった俺が?好意を向けられる事があったなんて……。 いや、今はそんなことよりも、 「お前は何が言いたいんだ?」 目の前にいる男、須川大貴に尋ねる。 すると、大貴は問い返してきた。 「お前こそ、どうするつもりなんだ?いじめをしていた生徒を探すつもりか?」 問いに対する答えを俺は即座に答える。 「ああ。当たり前だ。」 「美玲ちゃんは探さないでくれって言ってたのにか?」 呆れたような顔をして、大貴は答える。そして、「じゃあな」と言って、屋上を出て行った。 ______________________________ 「はい。すみません。ありがとうございます。では、失礼します。」 体がだるい。学校には連絡したが、いつまでも休んではいられない。 屋上から出て言った後、家に帰ってすぐ疲労感と頭痛が襲ってき た。 それからの記憶はあまりない。 しかし、丸二日間安静にしているというのに、一向に治る気配がない。 思っていたよりも、ショックが大きかったようだ。 そんなことを考えていると、強烈な睡魔が襲ってきた。 俺は、強烈な睡魔にあっさりと負けてしまい、深い眠りについた。 ────────────────────────────── 「……け!……大介?ちょっと聞いてる?大介ってば!」 ああ。これは夢……? いや、夢でも良い。夢でもいいからちゃんと美玲に謝りたい。 「あの……美玲……ごめん。気付けなくて……。あと……ちゃんと」 「探すから」と言おうとしたときに、ふと大貴の言葉が出てくる。 『美玲ちゃんは探さないでくれって言ったのにか?』 確かに美玲の手紙にはそう書いてあった。 犯人探しをするというのは、俺の願望なのか。それとも、美玲のことを思っての事なのだろうか。   ………………………いや、おそらく、俺の願望だろう。 美玲が犯人探しをして欲しくない理由はだいたい、クラスメートが好きだからだろう。 考えがまとまった所で、目が覚めた。
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