勇者にはならない

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 時が経って、今は15歳。もう大人として認められ、仕事をする歳だ。勇者適性とやらのお陰で、魔物に対する戦闘能力が普通の人より高いため、剣士としてギルドに登録し、仕事を斡旋してもらっている。  もちろん『勇者にしか倒せないような強大な魔物」の相手の仕事は、全て除いてもらっている。そこらの剣士でも十分相手にできる魔物の討伐の仕事などだけを回してもらっている。勇者適性のお陰で楽に仕事を完了できる。  だが僕は勇者じゃない。ただの剣士だ。稼ぎも平均程度で十分だ。聖剣を得るための神の試練? 魔王の永久撃破? 冗談じゃない。そんな面倒な事はやりたくない。  世界では勇者候補の人間が活躍しているのは、ギルドでよく耳にする。数が本当に少ないので、全パーティーを覚えた。誰がどんな強敵を倒して、どんな装備を持っているかも、全部知っている。  世界を救うのは僕じゃない。彼らだ。勇者の道を受け入れた彼らが世界を救えばいい。  そして今日もギルドから『勇者ではなく剣士としての』僕へ仕事が回ってくる。当然簡単に終えられるものだ。情報を聞き、準備をし、目的の魔物がいる場所へ旅立つ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!