勇者にはならない

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 1週間ほど旅路を進み、対象の魔物がねぐらにしている洞窟へと辿り付いた。躊躇せず松明を点ける。  盗賊系の適性を持つ人の『ステルス』や、魔法使い適性の人の『ナイトビジョン』などのスキルなら、松明を使わずに暗闇でも昼のように見られるが、あいにく僕にはそれらは使えない。  躊躇せず松明を点けたのは別の理由だ。勇者適性のスキルの1つ『モンスターキラー』。相手が魔物なら、与えるダメージが大きく、受けるダメージは小さくなる。プリースト適性のスキル『ゴッドブレス』が常時かかっているようなものだ。ただゴッドブレスは時間制限・マナ消費の問題があり、モンスターキラーに比べれば半分程度の能力上昇しかない。  だから勇者は魔物相手なら、とてつもなく強くなれる。本人に強くなる意志があり、実際に自身を鍛錬し続けていれば、という条件が付いてまわるが。  そんな面倒ごとはごめんだ。  歩みを進める。洞窟の無骨な壁が照らされ、石ころや草がそこら辺に好き勝手放置されている。  ふと気配を感じた。これもモンスターキラーの特徴で、近くに魔物がいると知覚できるのだ。これにより奇襲・不意打ちも非常にやりやすい。また足音やこちらの気配を、魔物に知覚させにくくもできる。  そのまま進んで、それがいた。 続く
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