第1章 林檎的大穴

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 ハートの看護師さんに待合室で待つよう言われたので、僕は待合室にあったファッション雑誌を見て最新のファッションとやらを学んでみることにした。  お洒落な格好に憧れて、好きなだけ、好きなことが学ぶことができる青春時代、いいなぁ。──二十六歳 自宅警備員(ニート)  僕は待合室でファッション雑誌を手に取ると、何故か唐突に何も無かった自身の青春時代を思い出すと同時に、今、この瞬間も青春時代を謳歌している学生に対して羨ましく思った。  すると、ハートの看護師さんが一人の少女、青春時代を謳歌していそうな一人の少女を連れて待合室のドアを開けた。 「では、しばらくここでお待ち下さい」  ハートの看護師さんは待合室で待つようにと少女に言うと、少女を待合室に入れて、ドアを閉めるとさっさと奥の方に引っ込んでしまった。  (この病院に僕以外の患者?珍しいな、少し話してみようか。)  少女が待合室の椅子に座ったのを見計らって、僕は少女に話しかけてみることにした。 「こんにちは、今日はいい天気だね」  僕は自宅警備員(ニート)なので、初対面の人に挨拶するための文句が見当たらなかった。 「えっ、あ!はい!今日は絶好のテニス日和だと思います! 部長! 」  残念ながら僕はテニス部の部長ではない。むしろ運動神経は皆無だったので、文化部でのんびりと活動していたよ。  
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