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気まずい待合室から少女一人残して脱出した僕は、診察室の直線上にある薬品(※安全)を吸入する「吸引室」でいつもの様に吸引をしていた。
薬品が混ざっていると思われる無香の気体を毎回十分近く吸わされているが、正直心が落ち着いたりというような感覚は皆無で、本当に効果があるのかといつも不安になる。
ふと、診察室がある方向を見てみると、この病院には廊下に仕切りが無いため白衣を着た細身の青年──この病院の医院長がハートの看護師さんに引きずられている診察室の風景が鮮明に見えた。
「医院長!しっかりして下さい! ! 患者が待っています! 」
「えぇ……。面倒だなぁ……。働かないで暮らしたいー」
「……医院長。私、そろそろ怒りますよ? 」
「ごめんなさい、仕事します。許して下さい」
どこか僕と似たような部分を感じる医院長は気怠そうに診察室の椅子に座った。
“似たような部分”とはいってもあちら側は高身長で尚且つイケメンなのだが……。
その間ハートの看護師さんは待合室で待機している花音舞ちゃんを呼び出していた。
「樹想花音舞さん、準備ができましたので診察室にどうぞ」
目線を落としたままの花音舞ちゃんは、ハートの看護師さんに誘導され診察室に到着し、医院長の向かいにある椅子に座った。
「樹想花音舞さん、今日はどうしましたか? 」
「……。」
医院長からの質問に対し、花音舞ちゃんは自分の胸を撫でながら戸惑っていた。
待合室で雑談を交わした際も気掛かりだったが、花音舞ちゃんは彼氏が亡くなったという話をする際にやたらと自らの胸を撫でていた。恐らく彼氏に関して何か後ろめたい事柄があるのだろう、もしくは胸自体を後ろめたいのか──?
「わかった、じゃあシャツと上の下着を脱いで上半身裸になってもらえるかな?」
「!? 」
花音舞ちゃんがやたらと胸を撫でていることについて、どうやら医院長も気づいていたらしい。
思春期の少女を上半身裸の状態にすることはたとえ医師であっても褒められることではないが、患者の病気を調べるためならいた仕方ないことだ。仕方ないことだよな?
「わっ、わかりました……」
花音舞ちゃんは躊躇しながらもシャツを脱いで白のブラジャーを外すと──。
──花音舞ちゃんの胸には大きな“穴”が二つ空いていた。
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