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目を開けると、碧眼がシオンの意識を吸い込んだ。
「おはよう、シオン」
鼓膜を溶かすような青年の声に、シオンは思わず寝ぼけ眼を閉ざす。
どこから状況を整理していくべきだろうか。
「どうして私のベッドにいるんですか、スフェノス……」
「気持ちよく眠っていたのに、すまない。そろそろ朝食を取らないと、約束に遅れてしまうから」
「…………」
白磁の如く冷めた指先が前髪を梳く。
窓からは日差しが降り注ぎ、さわやかな朝を知らせていた。吹き込む西風がカーテンを揺らし、鳥の囀りが忙しなく行き交う。シオンは目を擦り、体を起こした。
彼女の起床を見届け、ベッドの縁に腰かけていた青年は立ち上がる。
「今日はアーネスとエレナ城に行く約束だったろう。彼女はもう朝食を済ませている頃だ」
「ごめんなさい。そんなに寝ていましたか……」
彼女の前に、蒸されたタオルが差し出され、シオンは礼を言う。見れば、テーブルには朝食が並べられており、着替えもかけられていた。
青年、スフェノスは金糸の髪を揺らし、秀麗な容姿に微笑みを浮かべる。
「君がとても心地よさそうに寝ていたから、僕が起こさないように頼んだんだ」
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