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「気持ちはとても嬉しいんですけど、それはすごい……恥ずかしいです……」
「従者は常に、主が心地よく過ごせる状態を保つのが仕事だろう?」
温かいタオルに顔を埋めたまま、シオンは唸った。
間違いはないだろうが、彼のそれはいささか過保護というモノだ。
スフェノスはグラスに水を注ぎ、椅子を引く。
「トーストはいつも通り2枚でいいかな? 給仕たちに少しわがままを言ったからね、今日は僕が君の朝食を作ったんだ」
「スフェノスが……?」
椅子に座ったシオンは驚いて彼を見上げた。改めて並んだ朝食を見れば、ここ数日で食べ慣れた食事とは確かに様子が少し違う。
いつもならトーストに卵料理や焼いたベーコン、サラダが主だ。それが焼いた魚の切り身や、豆の煮込みなどに変わっていた。ここ、アルデランの料理にしては珍しい。
スフェノスは少しばかり照れくさそうに笑う。
「僕たちは食事を取る必要はないけど、真似事ならできるからね。料理も習ってさえいれば可能だ」
「あなたがキッチンに立っているところが、想像できないのですけど……」
「アーネスも驚いていたよ。彼女の傾玉、ジェドネフはそういったことに興味がないようだね」
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