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今日は黒い軍服の襟を、首元までしっかり詰めている。この独特の黒い制服に緑の外套は、アルデアランの正装なのだそうだ。
シオンがアーネスの元へ歩み寄ると、その隣に大柄な男が不満げに現れた。どこからともなく現れる姿にもだいぶ見慣れたものだ。彼が翻す外套は、アーネスやシオンを収めてしまえる程の大きさだが、不思議とその布地には埃や泥はついていない。
「ジェドで良いって言ったろ」
「あ、すいません……。つい……」
シオンは男を見上げて口元を押さえる。対してジェドネフは口角を持ち上げ、彼女の肩を叩く。翡翠の瞳がいたずらに輝いた。
「ま、どこぞのガキ共も、お前さんを見習って、少しは俺を敬うべきだと思うがな」
「敬われたいと言うのなら、君はその口の悪さをまずどうにかしたらどうだい」
「言ってる側からコレだ」
シオンが口を開きかけたところで、視界が青年の背中に阻まれる。
大袈裟に肩を竦めるジェドネフへ、スフェノスは苦言を呈した。
「君の粗暴さでは、僕たちの品位を疑われる」
「品位ねぇ……。そんなモノで主が守れたら苦労はしねぇんだがなぁ」
「…………」
ジェドネフは言うや否やその場から姿を消した。一呼吸おいて、スフェノスもその場から姿を消す。
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