01.夢の始まり

8/8

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
 姿が見えないだけで、存在はシオンも感じていた。傍らに控えているのは間違いない。出会った当初からあまり友好的でないのは明らかだったが、力に物を言わせなくなっただけ進歩がある。  気まずい沈黙に、アーネスが咳払いした。 「朝から仲がよろしいな、君たちは……」  皮肉交じりのアーネスに続き、シオンは門をくぐる。  門の外へ出ると石畳で舗装された大通りが広がり、町の中央にそびえる黒い城へと真っ直ぐにのびている。馬車が行き交い、人の往来が絶えない。屋敷の中からは聞こえなかった喧騒に、シオンは感嘆する。 「約束通り、今日は少しだけアルデランを案内するよ。まずはこのシュティア国の中心。エルナ城へ行こう」 「うん」  シオンを連れ、アーネスは高くそびえる城へと向かい歩き出した。  広がる目新しい世界に、彼女の期待は膨らんだ。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加