お茶会

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 その後オルランドは帰ってすぐにマカロンとは何かを調べた。アーモンドとメレンゲ、砂糖で出来た丸っこくてかわいらしい見た目のお菓子で、おそろしく作るのが難しく時間がかかり面倒なお菓子である。彼はマカロン作りを極めるため、お茶会の開かれる城の厨房を借り、マカロンの作り方を研究した。彼にはどうにも、とことんこだわる性質があるらしかった。数々の困難を乗り越え、彼はようやく、自分の納得できるマカロンを作ることが出来た。その過程で余った卵黄は、マジックハンドでプリンやクッキーにした。彼はこだわりが無いところにはとことん雑になる性質もしていたらしい。  基本的に感情は表に出さないようにしてきたオルランドだが、古い友人達の前だと、わりとよく表情を変える。 「ふむ、随分と練習したようじゃの、プリン」  と、厨房に何の前触れもなくメルランがぽっと現れた。オルランドは動揺しながらも、メレンゲをかき混ぜる手は止めなかった。 「メ、メルラン、どうしてここに、いや人は、いつの間に」 「おお、美味いものだ。すが入っておらん。ほんのりとしたわし好みの甘さ。おぬし、随分と練習したようだの。八十点」 「違う、それはプリンだ! 私が練習しているのはマカロン!」 「ふむ、このクッキーは少し粉っぽいな。三十点」  慌てながらもアーモンドパウダーと粉砂糖を混ぜ合わせる手は止めていない。 「庭のバラのように真っ赤であるな。わしの好みじゃないが、まあよしとしよう」  気がつくとメルランは二つ目のプリンを食べながら、オルランドの作業を横から覗き込んでいた。オルランドは身を翻し、メルランから遠ざかった。 「ケチな奴よの」 「後の楽しみにすべきだろう、それよりどうしてここに来たんだ」 「おっと、そろそろ王が帰りなさる頃だ。それではオルランド、楽しみにしておるぞ」  またぱっと、なんも残さずに消えていった。オルランドは首を横に振って気を取り直し、作業の続きに戻った。この後メルランが現れることはなく、最初の練習から早三ヶ月以上が経った。とうとう今日は、お茶会の日である。
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