Ⅰ 

5/24
前へ
/25ページ
次へ
授業が終わり、学校を出た私はとある場所へ向かう為、電車に乗っていた。乗客は殆どおらず、車内は静まっていた。私は鞄から分厚い本を取り出す。魔術師に必要な術書である。今日の夜に犯人と会うならば、それなりの魔術を詠唱するだろう。魔術師の端くれである私だが、暗記をして損はない。 数十分経ったところで目的の駅に到着した。駅から数分歩いたところで、私は足を止めた。そこは私が暮らしていた場所。何もかもが焼けてしまった家の前。現在は立ち入り禁止になっているため、中に入ることは出来ない。 家事になった以来、ここへ来るのは初めてだった。ここに来たら、父さまと母さまが亡くなったという事実を受け入れることになるから。当時はそれが出来なかった。三年も経ってしまえば、受け入れることは出来る。目を背けてはいけないことを痛感する。両手を合わせて、黙祷する。 ――――必ず、無念を晴らしますから。安心して眠ってください。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加