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「……おはよ」
寝ぼけまなこでどうにかそれだけ呟くと、騒がしかったアラームが止まった。これでまた眠れるなんてことはなく、アラームが止まると同時にオレの眠気は嘘のようにどこかに消えた。
今日も快適な目覚め。爽やかな朝だ。
何年も昔にはアラームを止めても眠気までは消えなくて、そのまま寝てしまう、2度寝というものがあったらしい。
不便だなぁと思いつつ、なんとなく楽しそうだとも思ってしまう。うとうととした眠気が残っていて、その眠気に任せるまま起きるべき時間も無視する。ちょっと悪い事をしてるみたいで、興味が惹かれる。
でもまあ、確実かつ快適な起床が当たり前になっている今の時代じゃ無理な話だ。
オレは料理マシーンに今日の朝食を打ち込む。やっぱ朝は洋食。これは子供の頃から譲れないし、いつ弐織が来てもいいようにでもある。
弐織は今どき珍しい“旧世代体質”だから、朝に弱いし、食欲がないとか言って食べない事もしばしば。
だからなるべく弐織の好物をチョイスする。サクサクのクロワッサン。あっさりしたサラダ。あたたかなスープ。エトセトラ。
調理が終わる前に着替えを済ませてしまおうと部屋着を脱いだころ、来訪者を告げるチャイムが鳴ってモニターが起動する。そこには具合の悪そうな弐織がいつも通り映っていた。
今日は雨が降るみたいだし、弐織は昨日も夜更かしをしたんだろう。せめて早く眠ればいいのにとも思うが、旧世代体質には辛そうな朝だ。
そんな弐織を玄関先で待たせるのは可哀想だけど、オレが調理マシーンに「旧世代体質 朝の不調に効く」と打ち込んでから、ドアロックを開くべくモニター脇のパネルに触れた。
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