感情とは操作出来る物である。

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 それで扉はあっさり開いて、弐織(におり)がオレの家に入ってくる。  いつもどおり。 「おい、壱琉(いちる)! 毎朝毎朝なんて格好してんだよ!!」  そしてこのお叱りもいつもどおり。  というか、旧世代体質で頭とか痛い筈だから怒鳴らなくても良いのに。 「えー、オレ的には問題ないもん」 「お前に問題がなくてもオレが嫌なの!」 「でもハラスメントコードは出てないし、セーフでしょ?」 「ハラスメントコードが出ないからって問題ないワケじゃねぇよ」 「だけどコードが出てなきゃ、不快感は抱いてないってコトだよね?」  弐織が「やれやれ」とばかりに頭を抱えた。  ハラスメントコード。  個人の権利を侵害しないために定められている規定で、不快感を抱かせること・恐怖感を抱かせることはできないようになっている。  つまり現状を例に挙げるなら、着替え途中のオレを弐織が「不愉快だ」「セクハラだ」なんて感じれば、同性だろうが幼馴染だろうが関係なく、オレはシステムによって強制的に着替えさせられたり、弐織との接触ができなくなったりする。  それがないってことは、弐織に不快感を抱かせてないってことだし、他の誰かがいるワケでもないからいいと思うんだけど。弐織は変なとこが厳しい。  一応ハラスメントコードは適応されてるらしいけど、オレ達にとって当たり前のシステムほとんどが受け付けない体質、旧世代体質だからハラスメントコードの演算結果より自分の中の倫理観とかを大切にするのかな。  別にオレも倫理観がない方ではないけど、ちょっと面倒そうにも見える。 「それに少しはしっかりしねぇと駄目だろ。つーかお前いくつだよ? 高校2年が同い年にされる説教じゃねぇだろ、服をちゃんと着ろ、なんて」 「外じゃしっかりしてるじゃん? 家の中くらいだらけさせてよね」
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