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オレの冗談めかした訴えも、弐織はあっさり無視。
壁に備え付けられている装置だったり、端末にプログラムされている内容だったりを見ながら「もっときっちりした生活が送れるように設定してやろうか……」なんて恐ろしい事を呟いてる。
弐織には縁がない装置だけど、頭いいからあっさり使いこなせるんだろう。世話焼きな面も持ってるから、長年の付き合いで冗談だとは分かってるけど、本当にいじられそうで怖い。
でもまあ、オレの設定を勝手に変更するっていうのは冗談にしても、知的好奇心という観点からオレの部屋にある装置や端末に興味はあるみたいだ。
毎日毎日見ているはずなのに、毎日毎日目を輝かせてる。お気に入りのおもちゃを前にした子供みたい。
「そんなに珍しい?」
「さすがにお前との付き合いも10年以上だぜ? 物珍しさ、真新しさは感じねぇよ。でも興味はある」
言いながら弐織はオレの端末を覗き込んだり、装置の設定を確認したりして、なにか納得したように頷いてる。
ちなみにこれは、簡単にできることじゃない。オレの食事や睡眠、起床、健康状態。部屋の空調やインテリアなどなど。趣味嗜好にも生命維持にも直結するようなシステムだ、オレだけじゃなく、他の人間も、簡単に他人に触れさせたりはしない。
でも弐織に許しているのは弐織が特別だから。
大切で大好きな幼馴染だから。
そしてそんな感情さえオレの手で、弐織の手で少しシステムをいじれば書き換えてしまうことだってできる。
そうやってオレ達は嫌なことを忘れ、人への恨みを忘れるようにして生きてる。
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