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1.
『Please hurry back home!』
午後の授業が終わり、スマートフォンを見ると、珍しくホストファザーからテキストメッセージが届いていた。急いで帰って来てという短い文章に、柚木健人の胸はざわざわと騒ぐ。
――なんだろう……。
他には用件も何も送られてきていないことから、よほど急いでメッセージを送ってきた様子が窺える。今日は授業後に友人たちとコリアンタウンに行く予定でいたが、断って家路を急いだ。
ダウンダウンにある語学学校から、健人がホームステイをしている家までは、地下鉄とストリートカー(路面電車)を乗り継いで五十分ほどかかる。
最寄りの停留所で降りると、小走りで家へと向かった。大通りから住宅が立ち並ぶ小道に入ると、少し先には消防車やパトカーなど、普段は見かけない車が停まっているのが見えた。
――まさか……!
小走りは自然と駆け足になり、歩道を猛スピードで進む。消防車が止まる家の前に着くと、見慣れた背中が玄関先の芝生に立っていた。
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