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「……はぁ。 暑い……」
そんなこんなで夏休みは暇なわけだ。
中学ではちゃんと最後まで部活をやり、中三の夏休みは勉強漬けだったのだが、そのせいか。 いざ夏休み全日暇となると何をすればいいのか分からない。
これまでは夏休みの全てが自由の帰宅部を羨ましがっていたが、体験してみるとさほど楽しいということもないな。
その証拠に今俺は自室の窓から外をぼーっと見つめている。
夏休みの宿題にも先ほど手をつけて、今は休憩中だ。 今までは部活をやりながらだったから宿題に追われていたが、こんなもの部活がなければすぐに終わってしまうだろう。
現にまだ八月には入っていないのだが、もういくつか宿題を終えている。
「ほんっと、つまんねぇなぁ……」
手の甲に顎を乗せて、外を眺めながら呟く。
不意に、大声出してただ白球だけを見てグラウンドを走り回っていた光景が浮かぶ。
それと同時に、エース候補……いや、もうエースになったんだった。 そいつの、あの時の顔も頭をよぎる。
そして、いつしか俺の頭には野球部全員の顔が蘇っていた。
……本当に、辞めてよかっーーー。
「ーーーっ!! これだけは、考えたらダメだ」
頭を上げて、左右に数回振る。
ここでそれを考えてしまったら、あの時決意した俺を、否定することになる。
それだけは、絶対にしちゃいけないことだと思った。
「……本屋でも行くか」
そうしよう。 そうすれば少しは頭も冷えるだろう。
そう思い立った俺は強く陽が照っている外に出て、自転車を十分ほど漕ぐ。
漕いでいる間はなんとなく心地よかった。
爽やかな風が身体全体に当たり、暑さを紛らわせる。 信号に引っかかると汗が滲み出てくるが、また漕ぎ始めると涼しくなる。
その繰り返しがなんだか心を穏やかにさせた。
そんな中一瞬だけ、脳裏によぎったことがある。
……今までは自転車を漕いでいて髪が風で揺れるなんてこと、なかったのになぁ。
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