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「テラフォーミング。簡単に言えば、別の惑星を地球っぽく改造すること。その計画の一環で、私オリビアはこの星に赴任しました。目下、蒔いた種が生育するのを待っているところであります」 「その発言には事実と異なる部分があります」  頭の体操のために思考を口に出していた私に、人工知能が横槍を入れた。モニターに表示された簡素な顔文字が私を見つめていた。 「なにが嘘なのよ。事実そのものじゃない」 「あなたがこの衛星に降り立ったのは、たしかに任務のためではあります。しかしあなたに命じられたのは赴任ではありません。本来の任務はテラフォーミングの装置を置いて、地球に帰還することです」  まっとうな正論に、私は閉口する。  中指を立てて、ご意見どうもありがとうという感謝の気持ちを示した。  そう。  私はヘマをやらかした。  いや、正確に言えば、私が悪いんじゃない。  地球の天文学者が悪いのだ。  私が宇宙船の操作ミスをしたのも、まあ、たしかなんだけど。  だって、ワームホールを抜けた先にブラックホールが間近に(もちろん間近とはいっても木星の中心から太陽の表面ぐらいの距離はあるが)あったのだ。     
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