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終点の駅に着くと、特急電車からローカルな一両編成の電車に乗り換えた。景色は相変わらず田舎町だけれど、さっきまで遠くに見えていた山々が間近になり、時々山の中のトンネルを通った。
昨日の夜遅くまでバイトしていた徹は、乗り換えて間もなく眠ってしまった。私も何時間も電車の中にいる状態が続いて腰が痛かったけれど、まだあの街には辿り着かない。午前中に家を出たのに、目的地の駅に着いた時にはもう夕方近かった。
「徹、降りるから起きて」
徹を起こして無人駅を降りると、そこからバスに乗るためバス停を探した。
「マジかよ。次のバスが来るまで四十分もある」
徹はうんざりしたように言った。
「このバスで行くしかないんだよね」
駅の周りは何も無く、勿論、時間を潰せそうなお店なんて無いし、このままバス停の前で待つしかなかった。
「大体、沙紀たちはガキの頃、どうやってその街に行ったんだ? こんな不便な所なのに、迷子になって迷い込むような場所じゃ無いよな」
徹の言葉は最もだと思った。
「その街の近くで遊んでいたのかな? 私も全然思い出せなくて」
覚えていない事が多過ぎて、本当に昔私たちはその街に迷い込んだのか、本当に姉はその街にいるのか…………? 私は段々不安になっていった。
「こんなド田舎なのに、外国みたいな綺麗な街が本当にあるのか?」
徹も同じ気持ちなのか、そんな嫌味にも取れるような言葉を吐いた。
「だけど、今日予約したホテルはこんな素敵なところだよ」
少しムッとして、私は予約したホテルのパンフレットを見せた。西洋のお城をイメージしたような、そんな洋館のホテルだった。
それでも、徹はそのパンフレットさえ半信半疑で「本当かよ」と呟いた。
徹とふたりでいても、木々に囲まれた山奥の駅前でバスをひたすら待っているのは苦痛だった。
本当に姉はたったひとりでこんな寂しい所に来たのだろうか?
私は姉の行動が理解できないのと同時に、こんな場所にひとりで来てバスを待っている姉を想像してしまうと胸が痛んだ。
だけど、もしかしたらひとりじゃなかったのかも知れない。誰かに無理矢理連れて来られたなら……?
ふと、脳裏にあの絵葉書が浮かんだ。明らかに姉の筆跡ではない文字が並んでいた絵葉書。
あれはきっと、姉からのSOSに違いない。
姉は一体何があって、どんな気持ちでここにいたのだろう……?
急に嫌な胸騒ぎがして泣きそうになると、徹が「また沙紀は悪い方に考えているだろ?」と呆れた顔で私の肩を軽く叩いた。
こういう時は、楽観的な徹の存在に救われる。
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