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恋人を束縛する男の気持ちばかりが理解できた。
彼の携帯を奪って連絡先を全部消して、部屋に閉じ込めてしまえたらどんなにいいだろう。彼が誰かと会う度に、本当にそうしてしまおうかと何度も思った。それでもそうしなかったのは、彼が俺を受け入れてくれて、最後は俺のところに来てくれるからだ。望みがあると信じていた。
彼が幼い頃に誘拐されてトラウマを負っているのを知ることができたのは、海外勤務のお兄さんに会う機会があったおかげだった。付き合ってから二年が経っていた。彼は自分のことを話さないので、人づてでようやく知ることができた。
丸二日間も男に監禁されて、凌辱されたこと。縛られていたせいで、手首を掴まれるのが苦手なこと。カウンセリングを受けていたこと。過去のトラウマを薄めるために、不特定多数との行為をしているのかもしれないとカウンセラーによる所見があったこと。知らなかった。正常位を避けられる理由がようやく解った。そして許せなかった。彼はデザイナーの男に、度々手首に縛られた痕を付けられていた。その時は決まって、彼は顔を青ざめさせて、酷く体調が悪そうだった。激しいプレイをしてきたのかと、嫉妬していたのは完全な勘違いだった。それでも彼はその男に呼ばれれば会いに行ってしまう。
彼が誰かに抱かれて部屋に帰ってきた時に、かっとなって少し強引に抱いてしまったことがある。
疲れているのにだめだ、とか、彼はモデルなんだから、皮膚に残るような痕を作ってはだめだ、とか理性の声はその時遥か遠かった。とにかく彼の中に潜り込んで、知っている限りの彼の良いところを突き上げて滅茶苦茶に喘がせた。
「気持ちいいですか。ミコ先輩……俺のと……そいつのと、どっちが」
かわいそうに、勃ってももうほとんど出ない彼の先端を握って、答えられない問いを何度も投げかけた。
「ねえ……ミコ先輩……こたえて」
彼は長い睫毛に涙を滲ませて、緩く首を振る。さらされた白いうなじは俺の中の情欲をひどく煽った。誰かの痕を上書きするようにそこに噛みつきながら、後ろから腰を抱き締めて突きまくった。
すごく……すごく興奮した。
変な性癖に目覚めてしまいそうだった。
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