夢から醒めない夢

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 このままではおかしくなる。  彼が引かない以上、相手と交渉するしかないと思った。彼は怒るだろうと思ったけれど、彼の携帯を盗み見て相手とアポイントメントを取って緊張しながらこっそり会いに行った。もう会わないでほしい、と直球で告げると意外なほどあっさりと了解を得られた。  「あー。そっか。ミコも彼氏ができたのね。わかった」  短い髪を金色に染めて、耳にピアスをいくつも付けたいかにもな格好の男にあっさり引き下がられて拍子抜けした。  「俺の守備範囲からだいぶ出てるからね。そろそろかなと思ってたんだよ。彼氏ができたなら良かった。俺もミコほど綺麗じゃないけど、新しい子見つけたからさ」  それから、本当にデザイナーの男は彼に連絡を寄越さないでくれたようだった。  彼も自分から相手に連絡を取ることをしないので、自然と離れていった。おかげで、二人で過ごせる時間が格段に増えた。付き合えることになって、三年が経っていた。もっと早くに相手と交渉していれば良かったと悔やんでも悔やみきれない。  俺は相手の男に会ったことを言わなかった。彼は急に相手の男から連絡が来なくなったことで何か察していたんじゃないかと思う。でも、彼も何も言わなかった。  その頃からようやく、初めて穏やかな恋人生活を送ることができた。  あいってなんだろ。  なんて思いながら「愛してます」と毎日告げた。この大好きで何でもしてあげたくて、彼をずっと幸せそうな笑顔にさせ続けたいと願う気持ちでいいんだろうか。  とてつもなく大事で、自分の命も魂も全部捧げたい気持ちであってるんだろうか。
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