夢から醒めない夢

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 末っ子は甘やかされるというけれど、その通りに育てられた。  両親も姉も兄も、兄の友人たちも皆、自分に良くしてくれる。子供の頃から争いごとが苦手で、姉と兄の喧嘩が始まればすかさず止めに入ったし、学校でもいざこざからは積極的に遠ざかって穏やかな友達とばかり付き合っていた。時々血の気の多いのも居たが、自分に対してそれを向けるような友人は持たなかった。  思えば、十八歳で彼と出会うまで、自分が好きな人とは、自分が望んだ良好な人間関係しか、築いたことがなかった。  だから、自分の希望する関係を結べそうにない状況になって、どうしたらいいのか解らず途方に暮れてしまっていたんだと思う。  「先輩、俺のこと好きになってください」  ようやく『恋人』になれて、俺は告白すると同時に彼に願った。彼は笑って、簡単に「好きだよ」と返してくれた。  うれしくて、もっと欲しくて何度も乞うた。座った彼の前にひざまずいて、太股に頭を乗せてお願いする。彼は頭を撫でてくれて、「好きだよ」をくれた。  それから、何度目かの俺からの「愛してます」に対して「愛してるよ」とも、こたえてくれた。  それはとても、特別なことに思えた。
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