夢から醒めない夢

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 水島の恋する相手……桂木深殊(かつらぎみこと)と、その恋人である金メダリスト八重樫真琴(やえがしまこと)は二人とも同じ研究室に所属しており、先程は一次会の会場で仲睦まじくしている様(単に会話していただけだったが、雰囲気は明らかに恋人のそれ)を目の当たりにさせられた。二人は小学生の頃からの幼馴染みであり、同学年だった。  水島は無謀にもその二人の間に入って、嫉妬心丸だしで八重樫にくってかかるような姿を晒したのだった。  「邪魔したかと思ったよ」  中野の言葉に水島は力なく首を振って、ありがとうございます。などと言って頭を下げた。  ……いい奴なんだよなぁ。  しかし、どうにも相手が悪かった。  水島がどれだけいい男でも、相手はさらに上をいく男だ。いや、そもそも水島が出会う前から関係が出来上がっている恋人同士に、横恋慕できる隙など無かった。はじめから惹かれなければよかったな、と言ってもそんなのは理屈ではないのだから、仕方がない。そう、仕方がないとしか言いようがなくて、中野は水島にかけてやる言葉を探しあぐねていた。  「キョーチはいつも、よくやってるよな」  しょうがないので、中野は水島の良いトコ探しをして励ますことにした。  「おっつかれー」  水島がゆっくり口をつけていた一杯目のオレンジジュースが空になる頃、ようやく表向きの二次会を終えた博士課程(ドクター)の先輩たちが合流してきた。  「元気出せよキョーチ、まだまだ若いんだしお前イケメンなんだから、星の数ほど出逢いがあるって! 宇宙にどれだけ星があるか知ってるか?」  ほどよく酔っぱらったアラサードクターが、天文学専攻らしい絡みかたで水島の肩に腕を回して揺らす。  水島の恋の行方は研究室内では既に周知のこととなっていた。そのため、皆思い思いの方法で水島を慰めにかかる。真面目でよく気が利く水島を皆かわいがっていた。  無茶な構いかたをする先輩にも水島は困った顔をしながらも敬意を払って、大人しく話を聞く。  水島を励ます会は、盛大に催された。
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