夢から醒めない夢

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 肩を押して、仰向けになってもらう。正面から顔を見て、真剣に告白した。でも、五つ上のきれいな人は、いたずらっぽく笑うだけだ。  「ぜんぶ、って曖昧だな。どこが好きか、ちゃんと定義して」  そう言って形の良い指先が、俺の唇をなぞる。爪の先に口を開けて舐めるように指示されて、その通り舌を差し出した。とても敵わない。  昨夜発散され尽くしたと思っていた劣情の火が、身体の芯からまた這い上がってくる。この、美しいひとにこんな風に誘われて、抵抗できる雄などこの世に居るのだろうか。  「俺に優しく笑いかけてくれる顔が好きです」  「ふうん」  唾液で濡れた指が下に降りて、俺の裸の胸の先を摘まんで弄る。  「っ……」  身体を引くが、指は追ってきて許してくれない。仕方なくそのいたずらに耐える。やりたい気持ちが高まってしまう。  「顔だけ?」  クスクス笑う相手に、もちろん首を振った。  俺が冗談をいうと笑ってくれるところ。意外と几帳面なところ、大雑把なところ。たまに意地悪をすると(おもにエッチのときに)、涙を浮かべて拗ねるところ。  「そばにいるだけで、しあわせな気分にしてくれる存在のすべてが、すきです」  ふうん、とまた言って、指は反応を見せ始めた俺の陰茎をやんわりと握る。  「僕も水島のこと、すきだよ」  「……っ」  ずるい。ずるすぎる。  最上級の可愛らしい笑顔で、そんなことを言われたら……。  完全に勃ちあがってしまったものを、確かめるように指が撫で擦る。  誘うように目を細めてこちらを窺うのは、小悪魔のような表情だ。  「俺の魂を持っていったのは、ミコ先輩の遣い魔なんでしょう?」  きれいなひとが、吹き出して笑った。  もう我慢できなくなって、抱き締める。裸の皮膚が触れあって、お互い興奮していることがわかる。笑んでいる赤い唇を貪るように吸った。  瞬間に、鋭い針につつかれたかのように胸が痛む。しあわせだった。痛みは無視した。
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