夢から醒めない夢

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 腹の上に跨がって陰茎を収めた腰をゆるゆると揺すられる。蕩けそうに柔らかい肉壁に締め付けられて、切ないほど気持ちが良い。  「なんで、苦しそうに、笑うの」  そう言う見おろすひとも、眉を寄せて短いため息を吐く。繋がった場所から、指先まで痺れるような快感が広がっていく。  「不安だから、ですかね……。ミコ先輩が、もしも俺以外の人のことがすきだったらって、よく考えちゃうんです」  もしも彼が俺と出会う前に素晴らしい人と出会って恋をしていたら、俺とこうしていることもなかったかもしれない。  もしも、姉の雑誌をたまたま見てミコ先輩の写真に目を奪われていなかったら。  もしも、同じ大学の研究室を選ばなかったら。  もしも、ミコ先輩がドクターに進学せずに就職していたら。  もしも、俺が就職せずに進学していたら。  運命なんてほんのわずかなズレで決定的に変わってしまう。彗星の軌道がほんの少しずれただけで、星が消えるみたいに。  「ロマンチストだ」  腰を使いながら、やっぱりそのひとは優しく笑ってくれた。  一戦交えた後に、ベッドの脇に置いたままのビジネス鞄の中から濃紺のベルベット地にくるまれた小さな箱を取り出した。     
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