ナイフを手にした青年

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ついでに言うと、俺は小心者で女性との交際関係を絶つのが苦手だ。自分から別れを告げることができず、引き延ばしているうちに二股の状態が続いた。 だから、彼女の方からフッてもらった方が楽なのだ。 そう思っているはずなのに、何故。何故俺は今、こんなに頭に血が上っているのだろうか。 気が弱いはずの俺は何故たった今、彼女に刃物を向けているのだろうか。 何故、何故、何故……? 今更この行為を中断できるはずもなく、無情にも鋭利な刃物は彼女の体へと吸い込まれた。 それは、彼女のやわな体に簡単にめり込んでいく。 彼女がくぐもった声を出し、俺の足元に倒れ込むと、苦しそうに息をした。
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