ナイフを手にした青年

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ここで、ようやく俺は罪を犯していることに気が付いた。幸い返り血は飛んでいないけれど、このままでは言い逃れはできない。 あることを思い浮かべた俺は、彼女の汗ばんだ首筋に刃先を滑らせた。一筋の線を描くと、遅れて血液が玉のようにぷっくりと浮かび上がり、彼女の鎖骨に向かって流れた。 元々周りの情報に感化されやすい俺は、この前テレビで特集をしてした殺人事件を思い出しながら、忠実に死体を作り上げていった。 ――パシャリ。 どこかで聞いたことのある電子音。確か、俺のスマートフォンのシャッター音もこんな感じだったような……。
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