ナイフを手にした青年

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そういえば、俺はこんな所で一体何をしていたのだろうか。いつも通りに過ごしていれば、こんな路地裏に来たりしない。 さて、先程の青年は何を楽しそうに記録していたのだろうか。……思い出せない。 ――私、あなたには裏切られたくなかった。 彼女の声。これ以上は、思い出したくない。 スマートフォンを手に取り、彼女に電話をかけた。画面を見なくても連絡先が分かる。それくらい毎日電話をした。彼女の声を聞きたい。俺が思い出したあの言葉は、きっと夢の中の話だ。そうに、違いないんだ。 電車が走る音がして、ここは駅が近いことを知る。その時、車輪の音に混じってかすかに覚えのある着信音を聞いた。 それはすぐ傍で、すぐ後ろで俺を呼んでいた。 頭に鳴り響く着信音。 突きつけられた俺の罪。
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