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5 願う人
ー チャプン…
この星に夜がやって来ていた。
吸い込まれそうな暗い空には
ほんのり明るい薄紫のわた雲が
幾つもふわふわと漂い、隙間から
満天の星が顔を覗かせていた。
浜辺に到着した少女は、ホシヒトデを
ポケットから取り出し両手ですくうように
持ちながら素足で海の中へと歩みを進めた。
ー チャプ……チャプ……チャプ……
ちょうど膝まで足が浸かるところで立ち止まり、
じんわりと汗ばんだ額を手首で拭う。
『ふぅ。…もう夜ね…
でも間に合ってよかった。
この辺りで良いかしら…
さ、海へお戻り。』
手元に優しく囁きかけると
ホシヒトデを海の中へと放った。
ー ポチャン。
木の葉のようにゆらゆら左右に
揺れながら沈んでいくホシヒトデは
そっと海の底へと着地した。
しばらくすると、小さな小さな光が
ホシヒトデから溢れるように煌めき出した。
光はだんだん強さを増していき、煌々と光り、
それに共鳴するように、周りに散らばっていた
無数のホシヒトデ達もひとつ、ふたつと、
たちまち煌めき出していった。
透明なパープルの海にまるで
星の絨毯が敷かれたようだった。
『あなた空より海がお似合いね。
もう寂しくないわ。』
その場を動くことなく
様子を見守っていた少女は
感嘆の吐息を漏らした。
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