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3 歩く人
ー サク、サク、サク、サク
耳心地の良い音がする森を
少女は“ホシヒトデ”を探して彷徨っていた。
『おかしいわねー。確かに
ここに落ちたと思ったのに。』
“ホシヒトデ”とは、この星の空に浮かぶ
お星様になれなかったヒトデたちの事だ。
どういう訳かごく稀に、お星様になれたヒトデも
地上に落ちてくることがあった。少女は昨夜、
落ちてきたソレを探していた。
『おーい、海に戻りたいんでしょう?
一体どこ行っちゃったのよ。
もお…、いい加減出てきなさいよ!』
探し始めて随分と時間が経っていた。
りんご色に紅潮した頬をぷくっと膨らませる。
『全く手強いわね、うーん………ん!?!』
茂みの中に微かに光るものが見えた。
少女はじっと目を細める。
『…あ!!やっと見つけた!』
急いで駆け寄り、今にも消え入りそうな
ホシヒトデを優しくすくいあげた。
『やっと見つけたわ!…もう大丈夫よ。
私がちゃんとあの海に戻してあげるわ。』
少女はホシヒトデが喜んでいるのを感じた。
『大丈夫、分かってる。
ちゃんと伝わってるわ。』
いつもなら崩さない表情を珍しく緩め
ニコリと微笑んでみせた。
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