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レオナルドはたった今父と交わした言葉の重みを噛みしめる。国王ライオネルには、発する一言ずつに全ての猫を屈服させる『力』が宿っている。自分にはまだそれがない。
何か一つ大きなことを成し遂げねば、民を束ね率いることはできない。この旅は、その証を立てる機会でもあるのだ。
レオナルドはしばらく面を伏せて、ちらとライオネルの方を見た。すると、国王としての振る舞いはどこへやら、大きなあくびとともに背もたれで伸びをしている。ライオネルはいつもの『優しい父上』の顔に戻っていた。
「今でも慣れぬな、命を下すというのは。間違いではなかっただろうかと、いつもそればかりだ」
そう言って、ライオネルはほっとしたように、そしてどこか寂しげに笑った。
物心つく前に母親を亡くしたレオナルドにとって、ライオネルは縁となる唯一の親だった。王城の従者も多いとは言いがない中、忙しい執務の合間を縫っていつもレオナルドと過ごす時間を作っていた。己の力で王座を勝ち取った武勇伝や、イングランドとの戦争で得た教訓をよく語り、河辺のキャンプで魚を取りながら一夜を過ごした。勉強を見てくれる家庭教師はいるが、大きな背中を見せてくれるライオネルは、国王として、そして父として、レオナルドには追い付けそうにないほど大きな存在だ。
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